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渋谷直人『遠い声がする 渋谷直人評論集』(編集室水平線、2017年)

2,200円

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【仕様】 四六判並製 232ページ 定価[本体2,000円+税] 2017年9月15日発行 ISBN978-4-909291-02-8 C0095 【内容】 黄昏に、物好きにも、落穂拾い。拾えるものとて、少しばかり。なぜか? そうしないでは落ち着かない。陽は急速に西へと傾き、空を薄く染める。 ―あれはどこ、それはどんなふうに、と往事、行き過ぎた場所と、その理由や、様子を尋ねても、いっこうに手がかりは思い出せず、漠然と不安は募るばかり。 収穫がないなら、探索をやめればよいものを、ここ数カ月ばかり、埃り臭い書斎を這い回っては、この落穂拾いを続けてきた。 もともと、死後の勲を、などと思ったわけではない。なぜだろう? 齢、九十年。「弱虫、泣き虫、疳の虫」などと自己評価していた私。ここ数年、心不全の病状は、一進一退の膠着状態を続けている。これは実に、いやなものだ。「いつだろう? どんなふうに? ピーポ、ピーポの救急車は何回目なのか? あれはどんなふうに……」と堂々めぐり。果ては「ぽっくりさん、ぽっくりさん……不智不識のうちに、どうぞ……」となるのだ。〔中略〕 だから、私は可能な限りでの逃避を企てる。どこへ? 過去か未来へである。現在は、高齢と病いによって不可なのであるし、過去と未来も動かし得ないとしても、その陰影の甘やかさへの想起や、先取りによってだ。 こうして私は、主として過去の、落穂拾いに専念する。はじめは、両親や、兄たち、そして姉妹たち、しかし先の戦争をくぐってきた家族に遺品は少なく、想像力はすぐに枯渇した。そこで、私の数少ない若書きの資料集め、すなわち、落穂拾いが始まったのだった」(本書「あとがき」より) 【主な目次】 崩壊感覚について Ⅰ 思想詩人としての大江満雄 遡行者の孤独―金井直詩集『未了の花』を読む 〈逃走〉のエチカ―暮尾淳試論 Ⅱ 〈精神=生理の変換式〉の探究者―『幼年期』で見る島尾敏雄 憑依者たちの交響世界―比嘉辰夫論・覚え書 島比呂志の修羅 Ⅲ 存在の凹みで―坂上清詩集評 はるかなる生還―『吉川仁詩集』に寄せて 存在することの重みに耐えて―『石黒忠詩集』瞥見 辻五郎とは誰か―詩集『辻五郎の詩』をめぐって 遠い声がする―山本耕太郎詩篇評 【著者略歴】 著者=渋谷直人(しぶや・なおと) 1926年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。著書に『鳥と魚のいる風景』(近代文芸社、1982年)、『大江満雄論―転形期・思想詩人の肖像』(大月書店、2008年)、編書に『大江満雄集 詩と評論』(共編、思想の科学社、1996年)がある。

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