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四六判並製 256ページ
ISBN978-4-909291-01-1 C0036
【内容紹介】*版元掲載分より
1953年、「らい予防法闘争」のさなかに刊行されたハンセン病者の詩のアンソロジー『いのちの芽』。本書をきっかけに始まった詩人・大江満雄(1906−1991)と全国のハンセン病療養所に暮らす人びととの交流は、約40年に及ぶものだった。
「僕たち/片隅の人は片隅の価値しかないという人たちに抵抗しよう/僕らは待望の日のために/片隅を愛し/人間性の香り高い生活を創ってゆこう」(重村一二「待望の詩」)
「教養講座」の立ち上げ、楽団「青い鳥」の結成、「交流の家」建設運動、そして「らい予防法」廃止後の違憲国家賠償訴訟の闘い。彼らの活動は、詩や文学の領域を超え、社会的な実践にまで広がり、やがて歴史を動かす伏流水となった。
病気が全快する時代になってもなお存続した絶対隔離政策のもとで、ともに詩を書き、学び、対話をつづけた大江満雄とハンセン病者たち。彼らのかかわりは、その時代のなかで、どんな意味をもったのか。私たちがそこから受けとることのできるものは何だろうか。
「生きるとは、年をとることじゃない。いのちを燃やすことや」―本書は、大江によって「来るべき者」と呼ばれた詩人たちが語る、知られざる戦後史、文学史、社会運動史である。
【目次】
第一章 『いのちの芽』のあとさき
多磨全生園 山下道輔さん、国本衛さん
第二章 教養講座のころ
栗生楽泉園 谺雄二さん、越一人さん
松丘保養園 福島政美さん
第三章 「交流(むすび)の家」にこめた夢
栗生楽泉園 コンスタンチン・トロチェフさん
第四章 楽団「青い鳥」とともに
長島愛生園 森中正光さん、河田正志さん、
近藤宏一さん
第五章 私を立ち上がらせたもの
邑久光明園 中山秋夫さん、千島染太郎さん
第六章 語られない体験を詩に託して
大島青松園 中石としおさん、塔和子さん
第七章 待望の詩
菊池恵楓園 『樹炎』の詩人たち
第八章 「来者」の声を受けとめる
星塚敬愛園 島比呂志さん
第九章 医学と詩学とのつながり
神山復生病院 藤井俊夫さんの詩、その他
著者略歴
1971年生まれ。神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了。博士(歴史民俗資料学)。著書に『「忘れられた日本人」の舞台を旅する―宮本常一の軌跡』(河出書房新社、2006年)、『駐在保健婦の時代 1942-1997』(医学書院、2012年)、編書に『大江満雄集 詩と評論』(共編、思想の科学社、1996年)、『癩者の憲章―大江満雄ハンセン病論集』(大月書店、2008年)がある。現在、「人間学工房」のウェブサイトで「宮本常一伝ノート」を連載中。
*略歴は刊行当時のものです